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稲葉泰三 かつお節

職人名
稲葉泰三
屋号
有限会社 タイコウ
技能
かつお節
在住
東京都中央区

1956年東京都生まれ。20歳の頃より家業であった鰹節業界で働き始め、鰹節についての研鑽を積む。1986年「タイコウ」を創業、鹿児島県・枕崎産の最高の一本釣本枯節を求め、鰹節の本来のおいしさを知ってもらうために「鰹節マイスター」として、全国で出張出汁(だし)取り教室を開催。

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『古事記』に登場する「堅魚」がルーツ

うま味を抽出するために出汁(だし)を引く文化は世界に三つしかありません。中国の「湯」(たん)と、ヨーロッパの「スープストック」と、日本の「出汁」(だし)です。湯やスープストックに比べ、日本の出汁は短時間でさっと引けるいわばインスタントだし。それはつまり、出汁(だし)を引く食材の加工に手間と時間をたっぷりかけているということです。

ところで、鰹節って何時頃からあるかご存じですか。歴史を紐解くと……。どうやら古墳時代までさかのぼるみたいですよ。日本最古の文献『古事記』(712年)によると、雄略天皇のときに生鰹を加工した「堅魚」という表記があって、これが鰹節の起源であろう、というのが定説になっています。加工したといっても、そのころは素干し、もしくは煮干しだったと推測され、現在のような鰹節になったのは江戸時代になってから、たぶん1700年代。平穏な時代が続いた江戸時代に広く一般民衆に普及して、産地によって薩摩節、日向節、紀州節、三陸節などの名産品も生まれました。

昔ながらの製法で「一本釣本枯節」を

鰹節には二種類あります。カビをつける「枯節」(仕上節)と、カビをつけない「荒節」です。
枯節は、よく太って脂ののった生鰹を使い、時間をかけてじっくりと、世界一堅い発酵食品に加工されていきます。その工程を簡単に説明すると、生切り→篭立て→煮熟→放冷→骨抜き→修繕→焙乾→あん蒸→削り→日干とカビつけ(一番カビ~三番カビ)ということになります。カビは、抗生物質やチーズにも使われている青カビ。カビはその成長の為に鰹節の水分を吸収して成長します。結果、他の雑菌を防ぎ、鰹節が乾燥します。 脂肪分を分解して鰹に含まれるタンパク質を必須アミノ酸を含んだ良質なタンパク質に変化させていきます。枯節独特の豊かな香りやうま味もこのカビのおかげです。鰹節の表面の白い粉のようなものが、カビつけをした証。商品になって手元に届くころにはカビは死んでしまっていますから、タワシなどで洗い落とし、陰干しをして乾かしてから使います。

荒節は、おもに削り鰹(花かつお)に加工されるための鰹節です。カビつけをしない鰹節で、どちらかというと、痩せて脂の少ない鰹が使われます。

鰹節を守ることは、食文化を守ることだ

「松魚節」「鰹夫婦節」「勝男武士」。
これ、みんな「かつおぶし」って読みます。こんなふうに、いろいろな当て字が生まれ、お祝い事に欠かせないものになったということを挙げてみても、鰹節がいかに大事にされてきたかがわかります。

従来、鰹は一本釣りで1尾ずつ釣り上げられていたのですが、1975年ごろから巻き網漁法で鰹の群れを一網打尽にする漁法が増えはじめました。伝統漁法である一本釣りのほうが鰹の損傷は少なく品質もよいのですが、コストがかかるために一本釣りの水揚げは減る一方。いまや流通している鰹節のうち一本釣りの鰹を使っているのは2パーセント未満といわれ、鰹資源の枯渇も心配されています。
「そんな時代だからこそ、いい鰹節しか売らない。信頼できる職人が作った本枯節だけ売る。本物の鰹節の味を知ってもらいたいんだ」と、タイコウの代表取締役社長、稲葉泰三さん。よい鰹節を使えば、よいだしが取れる。おいしくて体にいい料理が作れる。「日本料理は、だしとともに発展したといっても過言じゃないからね。うまいだしがなくなったら、日本料理もおしまいだよ。時代がかわったからって、すばらしい食文化をなくしてしまうのはもったいないでしょ」。

鰹節への情熱が「だしとり教室」開催へ

昭和の中ごろまでは、鰹節を削るなんてごく普通の行為だったはず。ちっとも特別なことじゃなかったし、グルメや食通なんて呼ばれる人でなくとも、普通に主婦が、あるいはお手伝いの子どもたちが、「シャカッ! シャカッ!」って、毎日削っていました。でも、今、毎日鰹節を削っているお宅が、いったいどのくらいあるでしょう。台所の音と風景は、時代とともに大きくさまがわりしています。「削り節を使う時もたまにはあるけど、やっぱり削りたての美味しさが一番。毎日削ってだしを取るね。鰹節を削る光景が家庭からなくなったってことは、本当の鰹節の味を知らない人がたくさんいるってことなんだ。本物を知らないって勿体ないね」。これじゃあ、いけない! と稲葉さんは立ち上がりました。鰹節マイスターとして、鰹節の削り方と世界一おいしい、だしの取り方を指南する「出汁取り教室」を開くようになったのです。

ところで、鰹節(枯節)の削り方は?
「タワシで洗ってかびを落とすのは、出汁を引いたときにアクになるから。洗ったら陰干ししてよく乾かす事。削るのは頭部の側面からね。角度は30度くらい。削りはじめは不安定なので削り器のカンナの両脇に指を置いて支え、滑らせるように前後に動かします。ほどなく平らな面ができますから、そうなったら削り器に押さえつけるように手前から向こうへ、押すようにして力強く削ります。」

稲葉さんは、依頼があれば鰹節と道具を持って日本全国、どこへでも出かけて行きます。鰹節のほんとうの香りやおいしさを忘れた日本人に、もういちど、日本の味を思い出してもらうために。

作品例
  • かつお削り節/お試し詰合せ
  • かつお削り節/本枯節 花くらべ
  • 本枯節/一本釣かつお節(650g)
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