
徳利も、お酒も「すず」と呼んだ時代が
金、銀、銅、鉄、鉛、水銀とともに「古代七金属」に数えられる錫(すず)の歴史は古く、現存する世界最古の錫製品は古代エジプトの遺跡から出土した『巡礼者の壺』といわれています。日本に錫製品の製法技術が伝わったのは1200〜1300年前。お茶やお酒の器として用いられることが多く、古くは御神酒徳利じたいを「すず」と呼ぶことがあったといわれ、宮中では今もお酒を「おすず」ということがあるそうです。
錆びない、朽ちない金属なので縁起がよいとされ、繁栄を願う贈答品としても人気の高かった錫製品。錫の採掘が始まったのは飛鳥時代ともいわれ、長く日本各地で採掘されていましたが、昭和・・・
続きを読む!
江戸の粋、京の雅
昔話「舌切り雀」にも登場する葛籠(つづら)。葛籠とは、簡単にいえば竹で編んだ蓋つきの籠。通気性に富み、表面に塗る漆や柿渋に抗菌・防虫・防腐作用があるため、大切な衣類や紙製品を保存するのに最適であるとされてきました。形や大きさはさまざまで、用途に合わせて製作されることも少なくありません。ものを収納する道具として、箪笥よりも古くから使われてきた生活道具のひとつです。
京都東山区。東大通と五条通が交差するあたりに渡辺商店はあります。その作業場で葛籠を作り続ける三代目、良和さんの名刺には、その取り扱いの品について「衣裳・呉服・茶道具用・相撲明荷・文楽・歌舞伎・其ノ他張籠一式」と書かれ・・・
続きを読む!
幻といわれた技法
ガラスの粉末を型に入れて溶融し、成形するガラス技法があります。
金属の鋳造技術を応用したもので、古代メソポタミア文明のころから伝えられる古い製法。当時は彫ってくぼみを作った石や焼成した粘土の型に、珪砂(石英砂)や水晶を詰め、窯に入れて溶融する工程を繰り返して作ったそうです。着色のためには微量の金属鉱石を粉にして混ぜ込んで鋳型に入れていました。
盃や碗や皿だけでなく、装飾品も作られていたのですが、作り方が複雑だったばかりでなく、ガラスを取り出すために毎度、鋳型から作りなおさなくてはならないというメンドクサイ手法だったため、より大型で大量に生産することができる吹きガラス技法が発明・・・
続きを読む!
430年余、受け継がれてきた技法
「一楽、二萩、三唐津」。茶人の間で、茶碗の格付けとして古くからいわれてきた言葉です。侘び、寂びを重んじる茶の湯の世界では、素朴な唐津焼の風合いが格別に好まれてきました。
唐津焼は豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れてこられた陶工たちによって伝えられたとされますが、文献によると、それよりもう少し前、1580年代には肥前の国(現在の佐賀県東部から長崎県北部)で作られていたという記録もあるようです。唐津には蹴轆轤(けりろくろ)、叩き作りなど、李氏朝鮮から伝わった技法が現在に至るまでそのまま受け継がれている窯も残っています。焼成は連房式登窯という大がかりなものが多く、1300・・・
続きを読む!
「俺用財布」から「READY OR ORDER」に
もう10年以上前のこと。旅行先で、ふと知り合いの財布に目がとまった井戸さん。「使いやすそうだなあ!」。そう思ったから、自分専用にいちばん使いやすい財布、いちばん欲しい財布を作ってみようと思い立ったのだそうです。
小銭入れのしきりやマチ、ポケット、ホックなど細部にまでこだわって、あったら便利だと思えば取りつけ、不必要なものは取り払って、「これだ!」と思える財布をつくりました。それが井戸崇史オリジナルの第1号。そして、のちに立ち上げるブランド「READY OR ORDER」の原点となりました。
江戸の粋と洒落と、それに遊び心
東京で革工芸職人の三・・・
続きを読む!