
1枚の金属板が、カップに、盃に、茶釜に、香炉に
轆轤(ろくろ)にセットした円形の金属板と型。平らな金属板を回転させて「へら棒」と呼ばれる道具をあてがいます。すると、あれよあれよ、という間に平らだった金属板が美しい曲線を描きます。そのさまは、まるで手品のよう。
「へら絞り」というのは、金属板に「へら棒」と呼ばれる道具を押し当て、型に沿って成形していく伝統的な技法のこと。浅野盛光さんは宮内庁にも作品を納めている、その道の第一人者です。「風光」の号も持ち、これまで、茶釜や香炉などの茶道具、仏壇や神棚の道具、ワイングラス、徳利や盃、それに優勝カップやトロフィーなど、ありとあらゆるものを制作してきました・・・
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ブラシとハケは違います。
ブラシは漢字で書くと「刷子」。板に穴をあけて、その穴に獣毛を植え込んだものをいいます。毛は糸や針金などで二つ折りにして穴に植え込みます。こうすると毛の根もとの部分が上になり、ある程度のかたさがでます。だから、ブラシはほこりを払ったり、汚れを洗い落としたりするための道具として使われることが多いのです。
これに対してハケ(刷毛と書きます)は、毛先を平らに揃えて2枚の板ではさんで糸などで結わえて固定したもの。毛先がやわらかいので、おもに塗ったり、はいたりするときに使います。ちなみに、桶やまな板をゴシゴシこすり洗いするようなときに使うタワシ(束子)は、かたい植物の繊維などを一・・・
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江戸時代の厨にもあったおろし金
日本料理には「すりおろす」という調理法が頻繁に出てきます。おろす道具にもさまざまあれど、どうせ持つならぜひこれ! 料理の腕前が格上げされる手打ちの銅のおろし金です。
銅のおろし金の歴史は古く、正徳2年(1712年)刊行の『和漢三才図絵』(当時の百科事典のような書物)の「庖厨具の部」には「わさびおろしは銅をもってつくる。形は小さなちり取りのようで、爪刺(目のこと)が起こしてある。山葵、生姜、甘藷などをする。裏の爪刺は粗く、大根をする」という説明があり、現在のおろし金そっくりの絵も添えられています。
歴史が古いからこそでしょうか。おろし金の形状は関東と関西とではちょ・・・
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花切子ってなに?
午前7時。工房の明かりが灯ります。いつも同じ時刻に、夫婦並んで仕事を始めるのが目黒硝子技術工芸社の流儀。工房にガラスを削る音が響きます。ここで作られているのは、江戸切子のなかでも「花切子」と呼ばれる独得の技法を駆使した切子です。
工房の主、目黒祐樹さんは、目黒硝子美術工芸社の二代目。自宅の1階に工房があったので、子どものころから先代の仕事を間近で眺めながら育ちました。大人になったら「自分も花切子をやる」。自然にそう思い、高校卒業と同時に父を師と仰いでこの道に入りました。当初は外に修行に出ることも考えていたのですが、江戸切子の職人がその作品の一部に花切子の技法を取り入れることは・・・
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江戸の町人文化が育てた友禅
友禅というのは、貞享年間(1684〜1687)に扇絵師・宮崎友禅斎が始めた布に模様を染める技法のひとつ。京の都から伝わったこの技法が江戸で広まったのは文化文政のころといわれています。時代は町人文化の爛熟期。しかし、幕府の通達により、町人の生活は食べるものから着るものまで、じつに細かく規制されていました。江戸っ子たちは手の込んだ友禅染めを駆使しつつ、表は地味に、そのかわり裏地に金銀をあしらうなどして、洒落っ気を発揮。こうして雅できらびやかな京友禅とは趣の違う、江戸友禅が生まれました。色数は抑えめで一見渋め。でも、だからこそ、落ち着いた色味と粋な柄ゆきは、時代を超え、世・・・
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