木目込み人形のルーツは京都・上賀茂神社
「ひとがた」と書いて「にんぎょう」。先史の時代から、人は人形を作り続けてきました。祭礼や宗教行事のために、文楽や人形劇といった文化活動や娯楽のために。芸術作品として制作された人形もあれば、玩具として作られたものもあります。厄を払い、健康を願い、繁栄を願い、災い転じ、幸多かれ、と祈りを込めて作られたものもあります。
今回ご紹介する木目込み人形は、1740年ごろ、京都の上賀茂神社に使える高橋忠重という人が、祭礼の柳筥を作った余材に彫りを施して人形を作り、胴体に溝をつけ、その溝に神官の衣服の端布を押し込んで衣裳を着せたのがはじまりとされています。木目込み人形と・・・
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江戸時代の厨にもあったおろし金
日本料理には「すりおろす」という調理法が頻繁に出てきます。おろす道具にもさまざまあれど、どうせ持つならぜひこれ! 料理の腕前が格上げされる手打ちの銅のおろし金です。
銅のおろし金の歴史は古く、正徳2年(1712年)刊行の『和漢三才図絵』(当時の百科事典のような書物)の「庖厨具の部」には「わさびおろしは銅をもってつくる。形は小さなちり取りのようで、爪刺(目のこと)が起こしてある。山葵、生姜、甘藷などをする。裏の爪刺は粗く、大根をする」という説明があり、現在のおろし金そっくりの絵も添えられています。
歴史が古いからこそでしょうか。おろし金の形状は関東と関西とではちょ・・・
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櫛になりたや、薩摩の櫛に
日本人の黒髪を守りつづけてきたつげ櫛。材料となるつげ(柘植、黄楊)はツゲ科の常緑低木で、現在、国内で産出できるのは薩摩半島の指宿(鹿児島県)と御蔵島(東京都)くらい。たいへん貴重な資源です。
薩摩で櫛が作られるようになったのは江戸時代。材質が緻密でかたい薩摩のつげは歯が折れにくく、色艶がうつくしく、油持ちがよいので櫛材として珍重され、「櫛になりたや、薩摩の櫛に。諸国娘の手に渡ろ」と、唄になったほど。女児が誕生するとつげの木を植え、娘と一緒に大切に育てて嫁入りのときにはその木を売って道具を持たせる……そんな習慣もあったといわれるこの地で、伝統の技を受け継いだ喜多忠男さん・・・
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日本生まれの画期的な筆記具
万年筆を愛用している人さえ減ってしまった世の中、ガラスペンを使ったことがないという人は多いのではないでしょうか。でも、昭和30年代までは官公庁をはじめ、会社や事務所で書類筆記用、簿記用として広く使われていたポピュラーな筆記具だったのです。その後ボールペンが普及し、正式書類用として採用されるようになってからは、その簡便さに押され気味となり、需要も供給も減ってしまいました。いまでは、ガラスペンを作る職人さんも数えるほどです。
ガラスペンは日本生まれの筆記具です。1902年(明治35年)、風鈴職人だった佐々木定次郎が考案したガラス製のつけペンです。特徴はまず、そのペン先に・・・
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糸くず、ほこり、ペットの毛、煙草の灰…はい、まかせて!
高倉清勝岩手県九戸村の倉野地区。岩手県北部にあり、藩政時代には南部藩と呼ばれたこの地に、無農薬栽培のほうき草(ほうきもろこし)を使った「南部箒」があります。農閑期、南部の農家の人々はさまざまな生活道具を作って副業としてきました。その技術と経験に、独自の工夫を加えて完成させた高倉工芸の「南部箒」。モットーは「安心・安全」だそうです。だから使う人の健康と自然環境の保全を考えて無農薬栽培。独特のちぢれた毛先であらゆるゴミを掃き取る、ピカいちの箒です。
箒の穂先はまっすぐに整っていたほうがきれい──そんな概念をひっくり返してしまったこの「南部箒」・・・
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