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石井満 フライリール

職人名
石井満
屋号
やまめ工房
技能
フライリール
在住
東京都町田市

1960年千葉県我孫子市生まれ。大学卒業後、大手ケーブル会社に機械設計技師として入社。ロープウェイやケーブルカー、リフトなどの動力部分の設計に携わる。1999年に退社し、2000年に手作りのリールを製作する「やまめ工房」を設立。妥協を許さないカスタムメイドのリールを作りつづけている。趣味のハンドランチグライダーでは4階級のうち、3階級で2003年よりFAI世界チャンピオンの座を明け渡していない。

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フライリールはライン収納のための道具

釣りで使用されるリールのうち、最も歴史が古いのはフライフィッシングなどに使われる片軸受けタイプだそうです。フライフィッシングといえば、フライロッド(竿)のしなりとフライラインの重さをいかしたキャスティングのスタイルでよく知られています。目当ての魚やその魚の生息地に合わせて選ぶフライ(毛ばり)は数百万パターンもあるのだそうです。

さて、では、ここで登場するリールはどんな役割を持っているか……というと、フライラインを収納すること。フライフィッシング専用のラインは、ほかのラインより少々重く、塩化ビニールでコーティングされていて、太さも均一ではありません。フライリールの大きな役割は、このフライラインを収納することにあります。なぜなら、フライフィッシングではリールを使って巻き上げることがあまりないからです。そのためリールは本体と、ラインを巻くスプールのみで構成されていて、いたってシンプル。素材はアルミの削りだしのものや真鍮、鉄などが多いのですが、軽くするためのパンチ穴が開いていたりして、華奢なわりには、けっこうインダストリアルな雰囲気が漂います。

「極端なことをいえば、リールはロッドに合うラインが巻けさえすればそれでいい。それでいいから、なんでもいいようだけど、それでいいから、それだけじゃつまらないんです」
と、石井満さん。カラフルな貝殻をあしらったり、アンティーク処理をしたり。シンプルだからこそ、楽しめるのかもしれません。

オーダーメイドでつくってくれる唯一の工房

千葉の閑静な住宅地にある工房。石井さんは、アルミの削りカスに埋もれるようにして旋盤の前に座っていました。神経を集中させ、慎重に真鍮を削ります。じつは石井さん、もとはケーブルカーやロープウェイをつくる会社のサラリーマンでした。機械設計士として日本最大級の滑車の図面をひいていた男が、今は、手のひらにのるようなリールを精魂込めて作っているわけです。

「鳥人間コンテストに出たときに使っていた旋盤があったんです。釣りは子どものころから大好きでしたから、最初は趣味でリールを作り始めたんですよ」
えっ! 鳥人間コンテストに出たんですか? 「はい。5回くらい」と、にっこり。しかし、それだけではありません。じつは彼は、グライダー(模型飛行機)の世界では超・有名人。というのも、ハンドランチグライダー(体育館などの屋内で滞空時間を競う競技)の4階級中3階級で、2003年から記録を保持している世界チャンピオンなのです。

その石井さんが、全神経を集中して2日かけて作り上げるリール。すべてに立派な設計図があって、しかも、それはフリーハンドで描かれていて、できれば額に入れて飾っておきたくなるくらい素敵な設計図だったりします。壁に画鋲で留められたその図面をみつめながら、石井さんはアルミや真鍮を削ります。リールのパーツは20〜30。なかには、かなり細かい部品もあります。リールは工業製品。ですが「やまめ工房」の石井さんのリールは手仕事です。オーダーメイドでリールをつくってくれる工房なんて、ここのほかにはありません。

自分だけのものを持つ喜びをしているからこそ

できあがったリールのハンドルを回すと、ギアが爪をはじく小気味のよい音がします。カチ、カチ、カチ、カチ……。
「この音、ないと寂しいもんなんです。けっこう大事なんですよ」
注文をして、手元にリールが届いて、この音が聞けるまで、数ヶ月。
「ごめんなさい。すべてひとりで作っているから、ちょっと納期まで時間がかかります。でもそのかわり、できるだけオーダーにそえるよう、最大限の工夫をしますから、少しお待ちください」
素材や形だけでなく、重さや質感、色など、細かいところまでとことんこだわりたくなるのが趣味の道具。まわりの誰も持っていない、自分のためのカスタムメイド。石井さん自身がそんなリールを持つ喜びをいちばん知っていてくれるから、安心してお任せできるのです。

作品例
  • YA2D-23WZ
  • YA2D-23WZ
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