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板垣航二 革鞄

職人名
板垣航二
屋号
鞄工作社いたがき
技能
革鞄
在住
福島県

板垣航二~株式会社鞄工作社いたがき取締役会長。1932年、神奈川県生まれ。16歳で野球のグローブ製造の会社に、3年後には鞄製作所に修行に入る。その後、兄弟3人で株式会社三協鞄製作所を設立。現・エース株式会社の協力要請を受け、社員としてサムソナイトブランドの開発、製造に従事。1991年に独立し、福島県伊達市桑折に株式会社鞄工作社いたがきを設立。福島県ブランドとして世に知られる存在に。現在、株式会社鞄工作社いたがきは、長男・板垣泰一が代表取締役社長を、次男・板垣良二が取締役専務を務め、更なる発展を遂げている。製品デザインはすべて専務・板垣良二が手がけている。

商品一覧

使っていて心地よい!使っていて楽しい!

鞄職人、板垣航二さんが満を持して1991年に創業した「鞄工作社いたがき」。その歴史は「ティピーリュック」から始まりました。ネイティブ・アメリカンの移動式住居「ティピー」をモチーフにした個性的なシルエットで、肩にかけやすく、出し入れしやすく、中に入れる量によって留め具の位置が選べる、という工夫がいっぱいの楽しいリュック。2009年に第9回「ふくしま特産品コンクール」工芸の部で「ふくしま特選品大賞(福島県知事賞)」を受賞したこのリュックは、ものづくりへの情熱が詰まった、「いたがき」の原点ともいえる作品です。

ステッチの曲線ひとつにまで、手仕事のなせる技、持てる技術のすべてが注ぎ込まれた「いたがき」の鞄や小物。フォルムはどれもシンプル。それでいてほかと違うなにかがあって、それが持っている人の心をくすぐります。小さなこだわりを追求できるのは、そこにしっかりとした職人の技が生き続けているから。体に自然に沿うから持っていて疲れないとか、中身がみえにくいとか、ものの出し入れがしやすいとか、絶妙な位置にポケットがあるとか、むだな金具がないから服を傷めないとか。長く愛されるためのなにげない心配りがどの製品にも感じられます。

素材に妥協しない。手間を惜しまない。

カタカタ、カタカタ……どこか懐かしいミシンの音がする工房で、デザインを担当している板垣良二さんに、大きな方眼紙に描かれたデザイン画をみせていただきました。細部に至るまで寸法が書き込んであります。その寸法通りに、小さな留め具に使われるものまで、すべてのパーツの型紙をおこし、その型紙通りに革を裁断するわけですが、一点もの以外は型紙をもとに抜き型を発注し、抜き型を使って裁断機で革を1枚ずつ裁断するのだそうです。裁断が終わってすべてのパーツが揃うと、次はコバすき。縫い合わせて革が重なる部分の革を薄く削る作業のことです。補強のために入れる芯材なども同じように裁断し、コバすきを施します。ここまできてやっと縫製。ミシンを踏んでひと針、ひと針、丁寧に縫製し、ステッチを入れて完成です。

ところで「皮」と「革」の違い、ご存知ですか?
「皮」は、動物から剥いだ皮そのままの状態のもの。その「皮」が腐ったり硬くなったりしないよう加工したものが「革」です。そして「皮」を「革」にすることを「なめす」といいます。「なめし」の方法は大きく分けるとふたつ。ひとつは化学薬品を使った「クロームなめし」。もうひとつが植物の樹皮から抽出した渋(タンニン)を使う「タンニンなめし」で、濃度の違うタンニンを含んだ溶液に、何度も時間をかけてじっくりとつけ込む伝統的な方法。手間も暇もかかりますが、そのぶん丈夫で上質な革になります。環境に配慮した方法でもあります。

「いたがき」で使っているのは、ほとんど100パーセントタンニンなめしの革。タンニンなめしは丈夫だけど硬くて重いのが難点とされてきました。「いい鞄は重いんだ」という人もいます。ですが、やっぱり軽いほうがらくですよね。だから「いたがき」は考えました。タンニンでなめして、やわらかく軽い革をつくろう! と。そうしてでき上がったのがシュリンク(もみ)加工を施した「リンクル革」。軽くて丈夫で、革の風合いはそのまま、表面の凹凸が独特の表情を見せてくれる素材です。傷が目立ちにくいのも大きな利点。現在、人気アイテムの多くに使用されています。

経年変化を楽しみながら、長くいつくしんでもらえる品を。

さて、「いたがき」の鞄や小物にはたいてい「metier Koji」(メティエ・コージ)の刻印があります。「metier」はフランス語で職人技という意味。「Koji」は創業者の名前です。創立から22年。職人技を守り、後進に伝え続けながら福島県内ブランドとして着実に成長してきた「いたがき」のプライドがこの刻印に込められています。

そして創業者が職人となって65周年を迎えた年に登場したのが「M.Bien」(ムッシュ・ビヤン)シリーズ。フランス語で「イイ男」という意味です。こちらはすべて注文生産。多少時間はかかりますが、最高級の革を使い、職人技を結集して仕上げられる逸品です。

じつは「いたがき」の人気商品は鞄だけではありません。たとえばベルト。普通は2本の革を張り合わせて作りますが、「いたがき」のものは幅を倍にとって折り返して貼り合わせ、縫製したもの。牛1頭から数本しかとれない贅沢なベルトです。それだけに伸びにくく耐久性抜群。しかも微妙に内側に湾曲するよう縫製されているので体にフィットして締め心地がよいと評判です。

それから、一連の動作がユーモラスなキーケースも発見。スナップをはずすとホルダーからキーが滑り出てきます。ベルトを引っ張ってシュッと収納。これで鞄のなかでキーが迷子になることもない。キーが傷つくことも、硬いキーでほかのものに傷を入れることも防げます。

革製品のお手入れについても伺いました。意外と簡単です。手の潤いがお手入れ代わりになるので、汚れたりぬれたりしたときに柔らかい布などで乾拭きすれば十分だそうです。しばらく使わないときは通気性の良い布か紙の袋に入れて、ホコリを防ぎ、湿度の低いところにしまいます。ときどき出して風を通すことを忘れずに。鞄などは新聞紙を丸めて入れておくとよいでしょう。

鞄工作社「いたがき」では、購入サービスとしてネーム刻印をしています。どうか末永くかわいがってあげてください、という思いを込めて刻印を入れるのだそうです。もし修理が必要なときにはどうか遠慮せずに問い合わせてください。材料代などの実費はかかりますが、愛着のあるものが生き返って戻ってきたときの喜びは、なかなかどうして、うれしいものです。

作品例
  • メチエ・コージ ティピーリュック
  • メチエ・コージ キーケース
  • メチエ・コージ ホットドッグペンケース
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